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ビソプロロール  とても大事な薬だけど知ってほしい副作用

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 ビソプロロール 先発品名 メインテート、ビソノテープ  β遮断薬といって、アドレナリンという体をがんばれがんばれと刺激する(戦闘状態にする)ホルモンの働きを抑える薬です。心臓にあるβ1受容体への選択性が高いのが特徴です。  気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)といった空気の通り道が悪い人の治療にβ2刺激薬をよく使用しています。これはβ2受容体を刺激すると空気の通り道を広げるからです。β遮断薬のうちβ1・β2の両方を遮断してしまう薬は空気の通り道を逆に縮めてしまうので喘息の人たちに使えませんが、このビソプロロールは比較的安全に使用することができます。  心不全の治療や脈が速い不整脈の治療には無くてはならない薬です。狭心症の治療にも有効です。  拡張型心筋症や心筋梗塞後などで心臓の機能が弱った人たちにビソプロロールを投与すると心臓の機能が回復するをの実際に経験しています(他の薬と一緒に使うのが前提です)。心不全の人には別のカルベジロール(先発品名 アーチスト)という薬もよく使いますが、カルベジロールよりも脈を遅くする効果が強い印象です。 ここから先が本日特に書きたい内容。  薬の説明書(添付文書)の副作用には記載がありませんが、この薬を使っていると活気が落ちる人が時々います。特に高齢者で多い印象があります。  他のβ遮断薬より多い印象があります。明確な機序はわかりませんが、ビソプロロールが脂溶性(油に溶けやすい)のため脳に移行しやすいのが影響ではないかと自分では考えています。 この時点でビソプロロールが活気低下に関与していると考えられました。ビソプロロールが必須な状況もないため中止は可能だと判断しました。また薬が大量なのも問題だと考えました。 ビソプロロールは急に中止すると不具合が出ることがあるので、徐々に減量していきました。 また他の薬も順次中止していきまいた。 薬も11種類→6種類に減っています。 本日のまとめ

ACE阻害薬について

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 ACE阻害薬  上にも書いてあるように、(少なくとも日本での投与量では)降圧効果が弱い印象です。海外では日本の投与量の2−4倍で使っている様です。ただ心不全で血圧があまり高くない場合には、この降圧する力が弱いほうがかえって投与しやすいというメリットにもなります。 なんで血圧も高くないのに降圧薬を入れるだと思われるかもしれませんが、心不全の人にはACE阻害薬を入れたほうが状態がよくなるからです (これは研究上だけでなく実際の臨床で感じています)。また最近は診察する機会がなかったのですが、ネフローゼ症候群といって尿に蛋白がたくさん出てしまう病気の人にACE阻害薬を導入すると明らかに改善してきます(ガイドライン上は高血圧を有する場合と前提条件が付きます。)。  ACE阻害薬のメリットとして薬価が安いことがあげられていましたが…  前回提示したARBに降圧品(ジェネリック)が大量に出たため、値段においてはほぼ差がなくなってきました。  処方するにあたって一番困るのは空咳の副作用。  報告により頻度はまちまちですが、投与すると喉の違和感・空咳を訴えるかたが無視できないくらいいます。使い続けるとよくなる場合もありますが、空咳が原因で続けられないという方が多くいます。入院中や病院での外来ではまだ対応しやすいのですが、クリニックではこの副作用を考えると(特に降圧薬主体で考えると)どうしても導入に二の足を踏んでしまいます。  副作用の原因物質が誤嚥性肺炎予防に有効?。  サブスタンスPという神経に作用する物質が少なくなると、ちゃんと飲み込む機能や異物を飲み込んだときの咳反射が弱くなります。ACE阻害薬はこのサブスタンスPの分解を抑制することがわかっています。またACE阻害薬はブラジキニンという咳の原因となる物質の分解も抑制します(ブラジキニン自体もサブスタンスPを増やす効果があるようです)。  脳梗塞などで脳に障害をきたすとドパミンという物質が減って、結果サブスタンスPが少なくなるようです(細かい機序は割愛します)。サブスタンスPが少なくなると気づかないうちに唾液や食べ物をまちがって気道(空気の通り道)に飲み込んでしましい、結果肺炎を来してしまします。じゃあACE阻害薬でサブスタンスPを増やせば誤嚥性肺炎が減るんじゃないのかと研究した人たちがいて、ACE阻害薬を飲んでいるほ...

アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)の使い分け

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アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)  後に出てくるACE阻害薬より降圧効果は強いものが多いです。  薬価が高いのが難点でしたが、ジェネリックが出てきたので大分解消しました 。 オルメサルタン(オルメテック)  2004年に発売され使ったときに、今までのARB(ニューロタン・ブロプレス・ディオバン)より良く下がると衝撃を受けました。  当初は10㎎錠と20㎎錠のみ販売でしたが、10㎎でも下がりすぎる人が多かったためか2006年に5㎎錠が販売されています。  良い薬ですが他のARBと違い、 降圧薬として優等生なアムロジピンとの合剤はありません 。(一緒に入っているカルシウム拮抗薬はアゼルニジピン・カルブロックです) アジルサルタン(アジルバ)  カンデサルタン(ブロプレス)というARBより血圧を下げる効果が強い(統計学的な有意差がある)ため、薬価に有用性加算が付いた薬剤です(国がちょっと高く値段付けしているということ)。ちなみにアジルバ・ブロプレスともに武田製薬の薬です。  2020年9月現在、後発品(ジェネリック)はまだ発売されていません 。 ロサルタン(ニューロタン)  降圧薬として考えると他のARBと比べてちょっと残念な降圧効果です。(ACE阻害薬と同じくらいの降圧効果)  ただ血圧が下げる効果が弱いと心不全の人にも薬を導入しやすいため、一定頻度で循環器内科医によって使われ続けている薬剤でもあります。  蛋白尿を伴う2型糖尿病における糖尿病性腎症にも適応があります。  ロサルタン独自の作用として、 尿酸低下作用があります (尿酸をおしっこに排泄する効果による)。  尿酸と血圧がともに少し高い人には第一選択で使っています 。(1つの薬で済むため)  なおサイアザイド系利尿剤と併用するとしっかり降圧効果を示します。 他のARB  他にはARBとして上記があります。ただ個人的には新規で出すことはほとんどありません。 テルミサルタンはオルメサルタンと同じ位血圧が下がる効果がありそうですが、肝機能障害を来す人をちょいちょい見ます。  イルベサルタンは他のARBと違い、アムロジピン10㎎との合剤が販売されています。ただこのアムロジピン10㎎との合剤の影響で下肢にむくみが出た人は複数診察した経験があります。  イルベサルタンに関しては個人的に単剤で新規で処方したことがない...

降圧薬ではないカルシウム拮抗薬  ベラパミル(先発品 ワソラン)

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 心臓は筋肉で出来ており、体中に血液を送り出すポンプの役割をしています。  心臓の筋肉にもカルシウムが入る入口があって、その部分をブロック(拮抗)すると脈が遅くなったり、心臓が収縮する力が弱くなります。(陰性変時作用・陰性変力作用といいます)  前回説明したジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬はこの心臓の筋肉に対する作用が弱く、それ以外の血管を開くことによる反射(血圧が下がることに対する代償機能)で脈が逆に速くなることがあります。 ベラパミル(ワソラン)  この脈を遅くする効果を期待して使うカルシウム拮抗薬がベラパミルという薬です。脈が速い不整脈を抑えるときなどに使うことが多いです。  上の写真にもあるように黄色い錠剤です。  さてここで以前岩岡が実際に経験した症例のお話です。  救急外来で心不全の状態を薬などを使って安静にさせつつ 詳しく問診をしました 。(研修医の先生たちは話をちゃんと聞いたり身体所見を十分とらずにとりあえず検査をしてしまうことが多いですが、問診・身体所見をしっかりとることは重要です) 話を聞いていくとどうやら 家族にもらった便秘薬 (だと言われているもの)を数日前から飲み始めたら具合が悪くなったとのこと。というわけで実際に飲んでいた薬を確認しました。                                                                       ↓                                            ...

高血圧の薬 カルシウム拮抗薬(カルシウムブロッカー)の使い分け

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カルシウム拮抗薬 先発品(最初に売りだされた薬)は、企業が色々考えて名前を付けています。 この後出てくるノルバスクという薬。名前の元は Nor malize Vasc ular (血管を正常化させる) → Norvasc から来ています。 眠剤で昔から使われている アモバン  → 「あーもう晩」から来ていると言われています。(薬の説明書には記載がありませんが) これも眠剤 マイスリー →  My Slee p (ちゃんと薬の説明書に書かれています) →  語呂合わせのものも多いです 。 対して後発品(後から売りだされた薬)は、薬の一般名の後に会社名を入れることが多いです。(先ほどのノルバスクの一般名はアムロジピン) カルシウム拮抗薬の中で臨床的に使うものは大きく分けて3種類あるのですが、その中でもジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬が主に高血圧の治療に使われます。 ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬が特別な理由(例えば心臓がわるいなど)が無い限り、最初に選ばれることが一番多い薬剤です。 ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬の説明書にはグレープフルーツ ジュース と一緒に飲まないでと書いてあります。しかしグレープフルーツの実がダメとは書いてはありません。グレープフルーツの皮に多く含まれる成分がこの薬の作用を強くしてしまう(分解を遅くする)ため、一緒に取らないよう指導しています。 ( みかんやオレンジは基本的には関係ありません ) アムロジピン(ノルバスク、アムロジン) この薬剤だけでコントロールがつくことが多く、 現実的にこの薬剤がないと降圧薬治療は大変 です。 世の中には複数の降圧薬を混ぜたものが多くでていますが、カルシウム拮抗薬の中で選ばれているのはほぼこの薬剤です。 即効性はないがじんわりと効いてくるため頭痛などの副作用がおきづらいです。 上にも書いてあるように1日10㎎まで使えます(発売当初は5㎎まで)。ただ10㎎にすると足がむくむという人が多くなります。 この副作用自体は添付文書(薬の説明書)にも10㎎になると多くなると記載されてますが、知らない医者も多いです 。 ニフェジピン(アダラート) 薬の成分自体は短時間しか効きません。昔は短時間しか効かないアダラートカプセルという薬剤が発売されていましたが、副作用・安全性等の面から使いづらく現在は販売中止になってい...

血圧を下げる薬(降圧薬)  医者はどんなふうに薬を選んでいるか

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 血圧を下げる効果がある薬はたくさん種類があります。 ただ「血圧は下げるけれど長生きには関与しない」、「血圧を下げる良い効果より副作用のほうが問題」、といった薬が選ばれても困ってしまいます。 高血圧治療ガイドラインでは、特別な理由がない限り最初に投与すべき薬(第一選択薬)は上の薬から選びましょうとなっています。(どの薬も良いよっていうデータが揃っている) 細胞の中にカルシウム(イオン)が入ってくるのをブロックする(拮抗する)ことで働く薬です。 ホルモン等への影響が少ないのでミネラルバランスや腎機能への影響が少なく、 副作用チェック等での採血は基本いりません 。またホルモンの病気で血圧が高い場合、この系統の薬を飲みながらでも検査を継続できます。(ARB・ACE阻害薬・利尿薬などは影響が出てしまう) 降圧薬としてのカルシウム拮抗薬の使い分けについては後日別で説明します。(カルシウム拮抗薬として大きく分けて3種類あるのですが、特に研修医は学生時代に暗記した知識の影響でかえってその種類のなかでの差がわかっていないことも多いです。) どちらの薬もレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系というホルモンの流れに作用する薬です。 細かい説明は省きますがレニン→アンギオテンシンⅠ→アンギオテンシンⅡ→アルドステロンというホルモンの流れが頑張ってしまうと血管を収縮させたり、尿からナトリウムをたくさん回収することで血圧が高くなります。 ACE阻害薬のほうが古くからある薬で、 心不全治療にはなくてはならない薬です 。ARBと比べて値段が安いというメリットもあります。 ただ ARBより血圧を下げる効果がやや弱い (ガイドラインにも似たような記載あり・海外での使用量に比べて少ないだけかもしれません)、 空咳の副作用で使い続けられないひとが一定数いる 、といったデメリットがあります。今のご時世、咳をしていると周りの人からの視線が怖い…。 ARBには空咳の副作用は有りません。 どちらの薬も心臓や腎臓を守ってあげる作用がありますが、特に投与初期などに腎臓の値が急に悪くなったりカリウムというミネラルが高くなりすぎることがあるので、適宜血液検査で副作用チェックをしていく必要があります。 利尿剤にもいろんな種類がありますが、基本的にはサイアザイド系という薬が高血圧治療で使われます。 副作用対策で...

高血圧の治療 ・ 薬を飲む前にまずやるべきことがあります

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 高血圧の基準  血圧が高くてもそれだけでは症状がないことが多いです。そのため健診などで高血圧を指摘されても放っておいている人が多いと思います。  しかし  血圧が高いのを放置すると 1. 血管(ホース)に余計な負担がかかり続け、血管が固くなる(しなやかさがなくなる) → 体中に血液がうまく送り出せなくなる。 →  腎臓病や脳卒中・心筋梗塞などの原因になる。 2. 心臓(ポンプ)が血液を送り出すために余計に働かないといけない。 → 心臓に負担がたまっていく。 →  心不全の原因になる。 症状がないからといって高血圧を 放っておくと大変なことになります!! 血圧の評価  血圧の評価に関しては、家庭血圧がとても重要です。医者の前でだけ血圧が高い人がいるからです (白衣高血圧、ただ白衣高血圧のひとはその後普通の高血圧になりやすいといったデータもあるようです)。 血圧を測定する前には1-2分休んでください 。動いた直後は血圧もあがって当然で、上記高血圧の基準も安静時(休んでいるとき)のものになります。 測定する前にトイレにいっておくことも大事です 。個人的には手首で測定するものより腕で測定するものをお勧めしていますが、続けやすいもので構いません。 では血圧が高いからすぐ薬が必要かと言われると、必ずしもそうとはなりません。 薬を飲む前に必要なこと  高血圧学会では塩分を1日6g未満にしましょうと提言していますが、正直いきなりここまで制限することは難しいと思います。まずは何でもかんでも醤油をかけない、醤油の代わりにポン酢にする、七味やコショウなどで代用することで対応してもらうのが現実的です。  ここから先は科学的な正確性というより イメージの話 です。  塩って放っておくとすぐ湿気てしまいますよね。これは塩に水を蓄える作用があるからです。塩を体に摂り過ぎると余計な水分が体(血管内)にたまるので血管への圧力(血圧)が高くなってしまいます。また血管の中に蓄えきれなくなった水分が足などにたまってむくみとなります。( 塩分を控えると足のむくみがよくなる人は多いです )  熱中症予防で塩分もとりましょうと言っていますが、これも塩分が無いと水が体のなかにうまく残らないからです。 高血圧で減塩しましょうというのと、熱中症予防で塩分をとりましょうということは、結局は同じ機序に基づいてい...