ACE阻害薬について
ACE阻害薬
ACE阻害薬のメリットとして薬価が安いことがあげられていましたが…
処方するにあたって一番困るのは空咳の副作用。
副作用の原因物質が誤嚥性肺炎予防に有効?。
サブスタンスPという神経に作用する物質が少なくなると、ちゃんと飲み込む機能や異物を飲み込んだときの咳反射が弱くなります。ACE阻害薬はこのサブスタンスPの分解を抑制することがわかっています。またACE阻害薬はブラジキニンという咳の原因となる物質の分解も抑制します(ブラジキニン自体もサブスタンスPを増やす効果があるようです)。
脳梗塞などで脳に障害をきたすとドパミンという物質が減って、結果サブスタンスPが少なくなるようです(細かい機序は割愛します)。サブスタンスPが少なくなると気づかないうちに唾液や食べ物をまちがって気道(空気の通り道)に飲み込んでしましい、結果肺炎を来してしまします。じゃあACE阻害薬でサブスタンスPを増やせば誤嚥性肺炎が減るんじゃないのかと研究した人たちがいて、ACE阻害薬を飲んでいるほうが肺炎になる確率が1/3になるよと発表しました(カルシウム拮抗薬・アゼルニジピンのところで書いた副作用の部分を有効利用する感じです)。また降圧効果を来さないような少量でも効果があると報告されています。
肺炎予防を期待して脳梗塞後の人や誤嚥性肺炎を繰り返す人にあえてACE阻害薬を選ぶこともあります。ただ予防効果は無かったという報告もあること、実際に減ったという実感が個人的にはないこと、が悩みどころです。
なお話が少しずれますが個人的に誤嚥性肺炎予防に大事だと思っているのは、口の中をきれいにしておくことと口腔体操です。どちらも副作用は有りません。
ACE阻害薬による副作用としての血管性浮腫
ACE阻害薬の大きな副作用として血管(性)浮腫があります。上に書いたブラジキニンなどが原因となります。顔面(顔や唇など)・上記が腫れて呼吸困難の原因になったりします。個人的にはお目にかかったことはありませんが、救急外来でみられる急性血管性浮腫のうち最大30%の症例の原因がACE阻害薬だとされています。糖尿病治療薬してよく使われるDPP4阻害薬とACE阻害薬を併用すると血管性浮腫の危険性があがると報告されています。DPP4阻害薬を使っている人には使わないほうが良さそうです。
エナラプリル
前に書いた降圧効果の強いARBよりは弱い印象です。ただロサルタンとはそんなに降圧効果は変わらないような気がします(あくまで主観です)。
欧米では40mgまで使用されているようです。これだけ使えば降圧もしっかりするのかもしれません。
心不全に良いよというデータが多く、日本でも慢性心不全の保険適応があります(多くのACE阻害薬は高血圧に適応があっても心不全には保険適応がありません・実際には効果があるのですが…・リシノプリルという薬剤は保険適応あり)。
実際問題として降圧を主目的として選択することがほぼなく主に心不全治療薬してだったり尿蛋白が多い慢性腎臓病の症例に使うことが多いため、ACE阻害薬では使い慣れているエナラプリルを選択することが多いです。
イミダプリル
誤嚥性肺炎予防というと最初にあげられる薬剤です。投与量・降圧の感じはエナラプリルとあまり変わりない印象です。この薬剤は心不全に対する保険適応はないですが、糖尿病性腎症に対する保険適応があります(厳密には1型糖尿病に限るのですが)。
ペンドプリル(先発品 コバシル)
個人的に使用したことがないので偉そうなことはなにも言えないのですが、ACE阻害薬のなかでは一番効果時間が長い薬です。大規模研究の結果から、心筋梗塞後にはペンドプリルを選ぶという循環器専門医がいます。
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