高血圧の薬 カルシウム拮抗薬(カルシウムブロッカー)の使い分け
カルシウム拮抗薬
この後出てくるノルバスクという薬。名前の元は
Normalize Vascular (血管を正常化させる) → Norvasc から来ています。
眠剤で昔から使われている アモバン → 「あーもう晩」から来ていると言われています。(薬の説明書には記載がありませんが)
これも眠剤 マイスリー → My Sleep (ちゃんと薬の説明書に書かれています)
→ 語呂合わせのものも多いです。
対して後発品(後から売りだされた薬)は、薬の一般名の後に会社名を入れることが多いです。(先ほどのノルバスクの一般名はアムロジピン)
カルシウム拮抗薬の中で臨床的に使うものは大きく分けて3種類あるのですが、その中でもジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬が主に高血圧の治療に使われます。
ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬が特別な理由(例えば心臓がわるいなど)が無い限り、最初に選ばれることが一番多い薬剤です。
ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬の説明書にはグレープフルーツジュースと一緒に飲まないでと書いてあります。しかしグレープフルーツの実がダメとは書いてはありません。グレープフルーツの皮に多く含まれる成分がこの薬の作用を強くしてしまう(分解を遅くする)ため、一緒に取らないよう指導しています。
(みかんやオレンジは基本的には関係ありません)
アムロジピン(ノルバスク、アムロジン)
この薬剤だけでコントロールがつくことが多く、
現実的にこの薬剤がないと降圧薬治療は大変です。
世の中には複数の降圧薬を混ぜたものが多くでていますが、カルシウム拮抗薬の中で選ばれているのはほぼこの薬剤です。
即効性はないがじんわりと効いてくるため頭痛などの副作用がおきづらいです。
上にも書いてあるように1日10㎎まで使えます(発売当初は5㎎まで)。ただ10㎎にすると足がむくむという人が多くなります。この副作用自体は添付文書(薬の説明書)にも10㎎になると多くなると記載されてますが、知らない医者も多いです。
ニフェジピン(アダラート)
薬の成分自体は短時間しか効きません。昔は短時間しか効かないアダラートカプセルという薬剤が発売されていましたが、副作用・安全性等の面から使いづらく現在は販売中止になっています。昔の研修医向けの参考書には、血圧が急上昇時にアダラートカプセルを舌下させる(中の液体を舌の下に注射器などで流し込む)、といった記載がありました(添付文書にもかみ砕いて含みといった記載がありました)。効果が強いのですぐ血圧がさがったのですが、血圧が下がりすぎたり反動で脈が跳ね上がる・脳梗塞を引き起こすなどしてかえって状態が悪くなることも多くありました。2002年には舌下投与の記載が添付文書(薬の説明書)から消されています。
2009年に自分が東京北社会保険病院(現在の東京北医療センター)に赴任した際は救急外来にまだアダラートカプセルが残っていましたが、危ないからやめましょうとどかしてもらいました。
現在使われている薬はゆっくり染み出すように改良された薬(徐放性製剤)です。このゆっくり染み出す薬は上記のカプセル(短時間しか効かない)ものと違い、心臓・腎臓・脳の保護効果や長生きにも悪さしないため使われています。アダラートLのようにLがつくものは1日2回用、CRがつくものは1日1回用です(狭心症などでわざとCRでも1日2回にすることもあります)。
血圧を下げる力はカルシウム拮抗薬の中でもピカイチ。(いまどきピカイチってあまり言わないかもしれませんが…)
副作用の出方も他のカルシウム拮抗薬より出やすい印象。(足のむくみや歯肉が腫れるなど。逆流性食道炎・胸焼けの症状が出ることも。)
血管の痙攣による狭心症(冠攣縮性狭心症)にも非常に有効です。
20週以降のしばりがあるものの添付文書(薬の説明書)で妊婦にも使って良いよと書かれている数少ない薬です。
血圧が高いからといきなりニフェジピンを処方すると頭痛で使い続けられなくなる人をちょくちょく見ました。ただアムロジピンから切り替えると、頭痛を訴える人は殆どいません。(実際の切り替え例 アムロジピン5mgで効果不十分 → ニフェジピンCR40mgに変更)
アゼルニジピン(カルブロック)
通常8−16mgで使用します。最大量16mgでもアムロジピン5mgより降圧効果が弱い印象。
ただアムロジピンと違って心拍数を下げる効果があります。(アムロジピンは逆に少し脈が速くなることがあります)
発売当初の印象は、イマイチという印象の薬でした(メーカーさんすみません)。自分では当初あまり処方していませんでしたが、この薬が原因で脈が遅くなりすぎた人を東京北医療センター時に立て続けに診察する機会があり考えが変わりました。脈が遅くなるのであれば、動悸や頻脈(脈が速くて困っている)患者さんに使えば薬の数を増やさずに対応できるのでは無いかと考えたのです。実際に対象を選んで処方すると1剤で血圧・動悸症状ともに改善する症例が多くありました。(開業したあとも他院で処方されていたアムロジピンをアゼルニジピンに変更することで動悸症状が改善した症例がいます)
ベニジピン (コニール)
通常の使用量は1日2−4mg(最大8mg)。
あくまで個人的な意見ですが、血圧を下げる効果はアムロジピンより弱い印象です。(もちろん逆の意見を言う循環器の先生を実際に知っています)
血圧を下げる効果が弱いわりに、ふらつきと言われることも多い印象です。(他のカルシウム拮抗薬に変更することで消失)
血管の痙攣による狭心症に有効なことが多く、血圧があまり高くない症例でよく処方しています。(血管の痙攣による狭心症の場合には、1日2回で投与が基本になります)
ジルチアゼム(ヘルベッサー)
カルシウム拮抗薬最後に紹介するのは、ジヒドロピリジン系では無い薬です(最後がジピンで終わっていない)
上に書いたニフェジピンと同じように薬剤自体の作用時間は短いので、ゆっくり染み出すように作られたカプセル製剤が基本的に使われます。(ヘルベッサーRのように最後にRがつきます)
ジヒドロピリジン系の薬剤と比べると血圧を下げる効果は弱いですが、脈を遅くする効果が強いです。(上記のアゼルニジピンよりもっと脈が下がる)
血管の痙攣によって起こる狭心症(冠攣縮性狭心症)に対する効果が強く、血圧があまり高くなく脈が速い冠攣縮性狭心症に対する個人的な第一選択薬です。ただ最近冠攣縮性狭心症に著効していたものの同薬剤が原因と思われる薬疹(薬の副作用よる皮膚あれ)を呈した症例がいて、変更せざるを得ないことがありました。皮膚科の医師からはジルチアゼムはいろんな型の薬疹を起こしうると指摘されました。もちろん頻度はものすごく少ない(個人的には初)ですが、注意して対応していく必要があると改めて考えさせられました。
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